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演歌はなぜ心を惹きつけるか:「歌謡の父」古賀政男名曲10選

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ときには一杯の澄んだ酒のように。ときには骨身に沁みる鋭い北風のように。演歌や歌謡曲を聴くとき、どうしようもない、やるせない深い哀しみに包まれることはないでしょうか?その強い情念は、どこから来るのか。鍵のひとつ、それはそのメロディです。現在の演歌のメロディの成立には、中山晋平、佐々紅華らと並び、古賀政男という人物が深くかかわっています。古賀政男は昭和歌謡を代表する作曲家で、彼の作る楽曲は「古賀メロディ」として広く親しまれてきました。今日はそんな古賀政男の楽曲の中から、心を震わすこと間違いなしの10曲をセレクトしてご紹介します。

①酒は涙か溜息か 歌:藤山一郎(1931年)

作曲家・古賀政男の名を世に知らしめた曲。当時の蓄音機の普及数の4倍の数の売り上げを達成したと伝えられています。古賀政男は、この曲の作曲の際、ありふれたメロディにならぬよう細心の注意を払ったといいます。1オクターブ7音の西洋音階と、5音の東洋的短音階との落差を埋めるためニ短調に仕上げました。その結果、新しい感覚に満ちた楽曲が生まれました。歌唱者・藤山一郎は、マイクロフォンに近くで囁きかけるように歌う「クルーン唱法」で歌っています。藤山一郎は、この歌唱法の採用について、「キーが低く声を張り上げるところが無い曲だから」と当時を振り返ります。抑えた想いを酒に溶かすしかないという情景は、現代を生きるわたしの目頭をも熱くさせます。

②影を慕いて 歌:藤山一郎(1932年)

古賀政男が自身の自らの最高傑作としてあげるのが、藤山一郎が歌うこの「影を慕いて」です。楽曲自体は1929年の作で、佐藤千夜子盤が先に販売されていましたが、こちらはヒットには至りませんでした。藤山一郎はこの曲を「酒は涙か溜息か」と同様に「クルーン唱法」で歌い、メロディにこめられた湿度の高い「影」を最大限に表現しています。満州事変が起こり、戦争へと向かっていく日本の人々の感傷を捉えたこの曲をはじめ、「古賀メロディ」はこの時代黄金期を迎えます。人はいつでもポジティブに未来ばかり見て生きていくことはできません。失望にまみれ、歩みを止めたくなることもあるでしょう。そんなことを思うわたしを秋雨のようにやさしく包んでくれるのは、この古賀政男の青春のエレジーなのです。

③誰が故郷を思わざる 歌:霧島昇(1940年)

戦時中の流行歌。当時の前線の兵士の間で流行し、次いで本土でヒットしました。「幼馴染のあの友この友 誰が故郷を思わざる」の言葉は古賀政男の紡ぐ旋律に乗り、多くの兵士たちの心を郷愁で満たしたことでしょう。この牧歌的で幻想的な「ふるさと」の歌は、今なおわたしたちの心を惹きつけてやみません。都会の片隅で一人聴くこの歌は、いつもわたしの胸に大切な「ふるさと」の光景を蘇らせます。

④シベリヤ・エレジー 歌:伊藤久男(1948年)

シベリア抑留を歌った楽曲。戦いの爪痕の大きさを物語る。どれほどの苦しみがあったのだろうか。どれほど無力さに打ちひしがれたのだろうか。戦後に生きる我々は、この曲の旋律に秘められたやるせない哀しみを通じてその片鱗を感じることができます。レコードには、単なる音の配列ではなく、その時代の心象風景が保存されている、そんなことを思わせてくれる一曲。

⑤湯の町エレジー 歌:近江俊郎(1948年)

ギター伴奏に歌が乗る典型的な「古賀メロディ」の楽曲。伴奏のギターを爪弾くのは作曲した古賀政男本人。40万枚の大ヒットとなり、近江俊郎の代表曲となります。湯の町のエキゾチックで湿潤な景色と失恋を嘆く青年の姿にしんみりします。「シベリヤ・エレジー」と同じく作詞家・野村俊夫とのタッグによる作品であり、聞き比べて見ると面白いかもしれません。

⑥ゲイシャ・ワルツ 歌:神楽坂はん子(1952年)

朝鮮戦争による特需景気で、各地の料亭は大いに繁盛していました。そうした背景もあり、多数の「お座敷ソング」が作られ、中でも「ゲイシャ・ワルツ」はブームを代表する楽曲となりました。客である男性と芸者のロマンス、そして立場違いの恋の悲哀が歌われています。「今夜はせめて 介抱してね どうせ一緒にゃ くらせぬ身体」の一節に鋭いアイロニーを感じる一曲。

⑦りんどう峠 歌:島倉千代子(1955年)

島倉千代子初の古賀作品。牧歌的な風景と姉との別れの対比が印象的な楽曲。農村の風景も、嫁ぐという概念も、かつてと今とでは大きく異なっているでしょう。その別れの「淋しさ」は遠い昔のものなのに、古賀政男のメロディは現代のわれわれにもその「淋しさ」を届けてくれます。民謡的な節回しで、高音域での歌声が心地よいです。

⑧東京五輪音頭 歌:三波春夫(1964年)

高度経済成長のなか、東京オリンピックをひかえ、国全体がお祭りの雰囲気に包まれていたことを感じさせるヒット曲。現在では、盆踊りでよく使用されています。この楽曲は各レコード会社で競作されており、橋幸夫、三橋美智也、坂本九、北島三郎・畠山みどりなどさまざまな歌手が歌いました。中でもヒットしたのは三波春夫盤で、その年130万枚を売り上げたといわれています。三波春夫の浪曲あがりの高らかな節回しは、明るい楽曲に華を添えます。ざわめく祭りの声が生々しく聞こえてくるようで、とてもわくわくします。

⑨柔 歌:美空ひばり(1964年)

スタンダード・演歌・ナンバーともいうべき構成。この時代からの楽曲は、楽器の編成も増え伴奏が豪華になっています。柔道をテーマにした同タイトルのテレビドラマの主題歌であり、オリンピックの存在もあってか180万枚の大ヒットとなりました。美空ひばりの歴代シングル№1の売り上げ枚数を誇ります。美空ひばりのブライトな歌声は明朗なメロディに乗り、苦心に喘ぎながらも夜明けを迎え、力強く生きていく希望のみえる楽曲。

⑩悲しい酒 歌:美空ひばり(1966年)

「未練なのね」とすすり泣く様な語りが印象に残る一曲。この楽曲のオリジナル歌手は北見沢惇で1960年にリリースしましたがヒットすることはありませんでした。
しかしながら、この曲の存在を惜しいと感じていた作曲者の古賀政男は、美空ひばりに新たに歌わせ、ヒットすることとなりました。ト短調の旋律を「好きで添えない 人の世を」と歌い上げるこの曲の「夜明け」は、オリンピックの空気を纏った「柔」の明るさとは対照的です。個人的には、美空ひばりの圧倒的な表現力が光っている一曲だと思います。一人カウンターに座り酒を仰ぐような女の姿が残酷なまでに鮮やかで、鋭くわたしの心をえぐります。

厳しい世の中で、やりきれない思いを抱え辛酸を舐める…そんな情景に、「古賀メロディ」は彩りを与えます。つらいとき、苦しいとき、どうしようもないとき…古賀政男の紡いだ楽曲群は、きっとあなたの心に染み入るでしょう。しかし、メロディは処方箋ではありません。あなたの哀しみを根本からすっきり治療してくれるわけではないのです。ただただ、あなたの心の不和に寄り添って一緒に過ごしてくれる、家族のような存在なのです。

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この記事へのコメント

- - 2012年12月14日 15:34:58

ひばりさんはいい曲ばかりですね

- 管理人 - 2012年12月19日 16:34:24

コメントありがとうございます。
もともと名曲であることは勿論、ひばりさんの幅広いジャンルを歌いこなす歌唱力があればこそ、ですよね。

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プロフィール

木野

Author:木野
心を締め付けて離さない、昭和の名曲たち。
真剣勝負、熱狂した紅白の舞台。
貧しくても、広大な夢の広がっていた時代。
そんな過去を追い求めて、平成の今を生きる一人の若造です。

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